包装フィルムの基礎知識
袋のおはなし
包装フィルムの性能用語
【衛生性・安全性 食品衛生法】
食品を包装するとき、そのフィルムが無害、無毒であることは基本条件である。
食品衛生法(第9条)では人の健康を損なう恐れのある容器包装の製造、輸入、販売、使用を禁止しており、厚生省の定めた規格試験に適合したものでなければ使用できない。
フィルム業界や関連業界では自主規制を実施して安全性を確保している。
また、無味・無臭であることも必要条件であるが、樹脂臭がまれに問題になることがあります。
【引張強伸度】
一定の巾に切ったフィルムを、片方を固定し、もう片方を定速で引張り、フィルムが切断した時の荷重を引張強度といいます。
また、切断した時点の伸びを%で表したのが引張伸度です。
引張強度が大きいほど強いフィルム、引張伸度が大きい程、伸びやすく柔軟なフィルムです。
【破裂強度】
一般にはミューレン型試験機で測定します。
フィルムの一定面積に圧力をかけ、フィルムが破裂したときの圧力をkg/c?で表します。
ON、PETなどの延伸フィルムは大きな値を示します。
セロハン、紙など吸水性フィルムは水分含量が大きいと数値は小さくなります。
【引裂強度】
伝播引裂強度はトラウザー法やエルメンドルフ法で測定します。
フィルムに切り目を入れておき、切り目の両端を一定荷重で引き裂いて、その抵抗を数値で表します。
この数値が小さい程、裂け口から破れるのに抵抗が小さい。袋の開封性にも関係します。
PEやCPPなどの未延伸フィルムは伸びやすいので引き裂きにくいです。
一軸延伸OPPや一軸延伸HDPEはたて方向に易引裂性をもちます。
【耐衝撃性】
フィルムの引張強度やシール強度が大きくても、耐衝撃性がなければ液体食品や粒状食品の包装で破袋事故を起こしやすい。
衝撃強度を測定する方法は各種ありますが、機械に頼ら簡便な方法としては、落袋試験がよく利用されます。
完全に密封できる袋を作り、一定量の水(小豆などの粒状物でもよい)を封入して、一定の高さから落下させ、破袋の有無を調べます。
強度が大きくても脆い材質は耐衝撃性に劣ります。
【耐ピンホール性】
レトルトパウチ食品など
フィルムは揉んだり、突起物に接触したり、局部摩擦を受けたりすると簡単に針先程度の小さな穴が発生します。これがピンホールです。
折り曲げや揉みによって生じるものを屈曲ピンホール、突起物によるものを突き刺しピンホール、摩擦によるものを摩擦ピンホールといい、どれが原因かによって対策も異なります。
フィルムの折り曲げ先端部がダンボールなどの側面に微振動で擦られると、殆どのプラスチックフィルムは簡単にピンホールが発生します。
液体包装、ガス充填包装、脱酸素剤包装では、この摩擦による事故が非常に多く、折り曲げによるピンホールや突刺強度の測定は機械もあり標準化されていますが、摩擦による耐ピンホール性は機械的に評価することは難しく、数字によるデータが少ないです。
【腰の強さ】
包装品の商品価値を高める要素として、フィルムの腰の強さを要求されることがあります。
硬い包装の方が内容物の保護性があり、ボリューム感を増し、見栄えもよくなります。
ヤング率(弾性率)で評価されることが多いです。
【すべり性/スリップ性】
一般には表裏とも滑りやすいフィルムのほうが都合が良いです。
表裏の滑りが悪いと自動包装機にかかりにくく、作業性も悪い。
内面のすべり性も同じで、自動包装機適性が悪くなり、ピッチがあわなくなったり、シワが入ったり、内容物が充填できないということが起こる。すべり性の評価は摩擦係数で表します。
逆に、滑りすぎても都合の悪い場合があり、表面あるいは内面をわざと滑らないようにすることもあります。
【耐ブロッキング性】
巻き取りや、袋の重ね置きで、フィルム同士が密着し、滑りにくくなったり、剥がれなくなることをブロッキングといいます。
巻き取りの状態でブロッキングが生じると包装機にかかりにくくなります。
また袋の状態では、袋同士が剥がれにくくなったり、開口性が悪くなります。
一定環境条件で荷重をかけてブロッキングするかどうかを判断します。
【帯電防止性/静電気防止性】
殆どのプラスチックフィルムは強い帯電性を持っています。
帯電すると微粉末の付着によるシール性、作業性の低下、陳列時のホコリ吸着による美観の低下等が生じます。
包装フィルムにとって静電気はないほうが好ましいです。
そこで帯電防止剤の練り込みやコーティングによって静防タイプのフィルムが製造されています。
評価法は、表面固有抵抗を測定する方法、灰吸引法などが用いられます。
【ガスバリヤー性/気体遮断性】
プラスチックフィルムは多少なりとも酸素ガス、炭酸ガス、窒素ガス等の無機ガスを透過させ、この透過量が少ない程ガスバリヤー性に優れています。
ガス透過度はcc/?・24hrs.atm.の単位で表示されます。
ガスの種類で透過速度が異なり、二酸化炭素は透過しやすく、酸素ガス、窒素ガスの順で透過しにくくなります。
【透湿度/水蒸気透過度】
プラスチックフィルムは水蒸気(湿気)を透過させ、包装食品の吸湿、乾燥の原因になります。
JIS規格による単位はg/?・day、40℃,90%RHで、この数値が小さいほど防湿性に優れています。
【耐油性・耐薬品性】
耐油食品を包装する場合にはフィルムの耐油性が必要となります。
殆どのフィルムは実用的な耐油性をもちますが、PEやCPPの単体は油脂成分を透過させます。
各種薬品、食品添加物、香料などに対する耐性もフィルムによって異なります。
例えば、ポリエステル(PET)はアルカリに弱く、ポリスチレン(PS)は有機溶剤に溶け、ポリ塩化ビニルなども特定の薬品に溶解します。
【保香性/香気保存性】
プラスチックフィルムは、ガスや水蒸気を透過させるのと同じく、食品の香気成分も多少なりとも透過させます。
香気成分の透過が大きいと、保存中の香りの逸散、外部からの臭気の吸着などの問題が生じます。
保香性は、ガスバリヤー性の数字とある程度比例しますが、完全に一致するものではありません。
フィルムの種類と香気成分によって透過速度が異なります。
ガスクロマトグラフィーによる測定や官能による評価が一般的です。
【ヒートシール強度】
一般の食品包装用袋は熱による接着のことです。
このヒートシール部の引き張り強度をヒートシール強度と言い、kg/15mm巾で表記することが多く、強度が大きいほど丈夫な袋です。
【低温ヒートシール性】
シーラントフィルムは低温でシールできるほど自動包装機適性や作業性が良くなる。自動包装機では包装スピードのアップ、ロスの低減が計れます。
また、袋の仕上がりも綺麗になります。フィルムがどの程度の低温シール性をもつか、ヒートシール曲線を作成して比較すればわかりやすいです。
【ホットタック性】
たてピローの重量物自動包装で、シール直後、シーラント樹脂が溶融状態でもシール強度があり、内容物充填時の圧力衝撃にもシール部が剥離しない性質をホットタック性があるといいます。
また、よこピローでもガス充填包装におけるフラッシュガスの圧力によるシール部の剥離防止のためにホットタック性が要求されることもあります。
一般に溶融したときの樹脂の粘着度が高いものほどホットタック性が良いといいます。
【夾雑物シール性】
包装時にフィルムの内面(シール部)に内容物である液体、粘体物、粉末などが付着してもシール性が低下しにくく、安全に密着シールができる性質を夾雑物シール性に優れているといいます。
【耐圧強度】
主として液体包装の場合に必要な測定項目で、包装品に一定荷重をかけて液の洩れがないかどうかを判定します。
【耐水性、吸水性】
紙、セロハン、ビニロン、ナイロンは水に浸漬したり、高湿度に放置すると吸水、膨潤し、本来のバリヤー性、腰の強さなどを失います。
したがってビニロン系フィルムは両面に耐水性のフィルムを貼り合わせて使用することが多いです。(OPP/EVOH/PEなど。)
【耐寒性】
冬期北海道の寒冷地では気温が−20℃以下にもなり、耐寒性のないフィルムで包装したものはしばしば破袋事故を起こします。
冷凍食品では−20℃以下、急速冷凍で−40℃あるいは−70℃にも耐えなければいけない事もあります。
耐寒性がなければ脆化、破れ、ピンホールなどが生じます。
【耐熱性】
包装食品を加熱殺菌する場合、殺菌温度に耐えるだけの耐熱性を持ったフィルムを使用する必要があります。
カステラ、まんじゅうなどの表面殺菌のためには熱風や赤外線による乾熱殺菌が、多水分系の食品は真空あるいは脱気包装してボイル殺菌、蒸気殺菌、レトルト殺菌などの湿熱殺菌が行われます。
樹脂の融点や収縮率で評価できますが、変形、変色、内面密着などの有無も評価要因になります。
【熱水・熱風収縮率】
ボイル殺菌やレトルト殺菌で、フィルムの収縮率の影響で、袋が歪んだり、容器フタ材の張りが不十分であったり、内容積が変化することもあります。
収縮包装や収縮ラベルでは熱風収縮率が性能や外観の仕上がりを左右します。
【耐候性】
プラスチック製品で、野外で使用するものに耐候性のない樹脂を採用すると、たちまち劣化して使用できなくなってしまいます。
一般の食品包装にはあまり関係のない性能ですが、PP樹脂は屋外で太陽光に暴露されると劣化しやすく、PEやPPより耐候性はあるが、やはり劣化します。
PETやONは耐候性に優れています。ウェザメーターによる加速テストで評価できます。
【透明性】
フィルムは透明性がよいほど内容物が良く見えて商品価値が向上します。
シーラントフィルムではPEやEVAに比べてCPPのほうが透明性、腰の強さに優れています。
PET、OPP、ONなども透明性は良いです。光の透過率またはHaze(雲価)で評価します。
【遮光性】
食品にとって光は大敵です。油脂成分の酸化、変色、ビタミンの破壊等を引き起こし、商品寿命を短縮させます。
蛍光灯や電球の光でも長時間になると影響が生じ、太陽光線エネルギーは電灯の比ではなく、直射日光下では短時間でもたちまち酸化します。
特に紫外線は微量でも影響が大きいです。
【開封性】
殆どのプラスチックフィルムは端部を手で引き裂くことが出来ないので、切り目を付けて手で開封できるようにしてあります(ノッチ)。
それでも直線的に切れないことも多く、そこで手切れ性の良いものや直線カット性を改善したものもあります。
【イージーピールオープン性/易開封性】
容器包装を開封するとき、手で簡単に開封できると便利です。
最近の成型容器包装はイージーピールオープンになっているものが多いです。
カップに工夫してあることもありますが、一般にはイージーピール用樹脂をフタ材のシール面にラミネートあるいはコーティングして用います。最近ではレトルトに使用できるものもあります。